大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)2579号 判決
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【判旨】
被告らが、銀及びアルジャンで原告主張の日に飲食をしたことは当事者間に争いがなく、<証拠>を併せ考えると、次の事実を認めることができる。すなわち、
銀及びアルジャンは原告経営にかかる会員制クラブであり、その客は、予め費用を拠出して正式のメンバーになつた会員及び会員の紹介によつて来店するビジターからなつている。被告らは、野村クリニック及び株式会社メディカル・アートの経営者である野村修三(会員)の紹介で銀及びアルジャンに来店するようになつたビジターで、被告政岡、同渡辺はメディカル・アートの、被告森は野村クリニックの職員である。
銀及びアルジャンでの経理の方法は、客の一人ひとりに七桁の数字からなる番号を付ける。七桁目は、五であれば銀、一であればアルジャン、が飲食の場所であることを示す。六、五、四桁月は客の勤務先を示す。すなわち、三五〇は野村クリニック、四四〇はメディカル・アートである。三、二、一桁目は客個人を示す。すなわち、アルジャン勘定の被告政岡は一二七、同じく被告渡辺は一一五、同じく被告探は〇五九で、銀勘定の被告森は〇八七である。したがつて、アルジャン勘定の被告政岡は一四四〇一二七、同じく被告渡辺は一四四〇一一五、同じく被告森は一三五〇〇五九、銀勘定の被告森は五三五〇〇八七をもつて表示される。客は飲食した分の伝票に、その都度署名するわけであるが、原告方では伝票の署名を見て前記番号を付し、個人ごとに伝票を取りまとめて封筒に入れ、勤務先に所在する客に送付する。客が何びとかの代理で署名しようとするとき、例えば被告政岡が野村修三の代理で署名するときは「野村修三(政岡)」というように署名をする。代理関係が署名により又はその他の方法で(例えば、野村修三から原告に予めその旨電話がある場合)明らかにされている場合を除いて、原告との関係では署名者に飲食代金支払の責を負つて貰う。右のとおり認めることができる。
そして現在の取引社会における署名の機能からみて、原告方における右の方法には合理性があり、被告らも右の仕組みに服する意思で飲食をしたものと解するのが相当である。もつとも井上証言によれば、後日井上が野村修三に面接した際、野村は、本件飲食は業務上の接待であつて野村の負担に帰すべきものである旨申し述べたことが窺えるけれども、そのことは被告らと野村との間で解決すべき事柄であつて、被告らの原告に対する債務には消長を及ぼさない。
そして前掲甲号各証(本訴請求金額との対応関係は、別表記載のとおり)によれば、被告らが原告との関係では被告ら自らが責を負うべきものとして原告主張どおりの飲食をしたことが明らかである。なお、<証拠>の署名欄には「野村クリニック〓」と記載されており、<証拠>の同欄には「野村クリニック森保三」と記載されていることが認められるが、右は被告森が肩書として自己の勤務先を表示したものと解せられ、野村修三の代理の表示としては不十分である。他に被告らが野村修三を代理して飲食する旨原告に表示したとの点については立証を欠く。
してみると被告らに対し別表1ないし3のとおり飲食代金の支払を求める原告の請求は正当として認容すべきである。
(乾達彦)